医師としての生きる道を選んだ者達へ 「良医」とは何かを共に考え、人の心に触れる感性と倫理感を磨く ― そのきっかけでありたい。
医者塾とは
日本医学界の未来を信じ、医学教育に情熱を傾ける有志により立ち上げられた「医者塾委員会」によって運営される活動です。
医学生に
【医師】という名の【職業人】になる前に、【人】としての感性を磨き、視野を広げよ。 職業が高い倫理性を与えるのではなく、磨かれた感性でのみ獲得できる。
現役医師に
【経験】という財産が、【慣れ】に形を変えるとき、視野を狭くするだけの『プリンカー』になる。 『ブリンカー』を着けたままの経験は、ただの【傲慢】にすら形を変える。
変わりゆく患者と医師の関係
医師は、聖職者・法律家と友に、プロフェッションと呼ばれてきた。時には、聖職という言葉で表現されることもある。それらは独自の倫理を必要とされ、おおむね自己犠牲を伴う職業である。故に貴しとされ、尊敬を集めてきた。
医療崩壊や医療倫理という言葉が取沙汰されている昨今だが、時代の流れと共に、医師と患者の関係が大きく変わってきていることも、誰もが感じている事実だろう。その変化は、医者に更なるコミュニケーション能力(=対人力)を要求しているようだ。
- ◆知識を持った患者
- かつて、医学知識は医者の特殊知識であった。しかし、インターネットをはじめとする情報ネットワークの充実は、瞬時にして様々な情報を得ることを可能にした。お医者様の言うことや処方される薬を、盲目的にありがたがるという患者はもう少ない。
しかし、自由に流される情報の信憑性や客観性には疑問も多い。にも関わらず、一般人にはその情報を精査する知識が乏しく、メディアに載るだけで、正しいと信じてしまいやすい。中には、不安をかき立てるだけの情報も存在する。
このように、様々な情報を様々な認識で持っているのが今の患者だ。 - ◆インフォームド・コンセント
- 70年代にアメリカで急速に広がったインフォームド・コンセント。90年代には日本でも明文化され、これにより、医者の権威に基づいた医療から、患者の選択権・自由意志を最大限尊重するという理念に変わった。今では、一般人にも非常にポピュラーな言葉となっている。
しかしながら、「同意書を書かせることと変わりはしない」など、その方法論や取り組み方に関しては、様々な論議が展開されている。
患者の医療知識も多くなっている中、インフォームド・コンセントは、医者の高いコミュニケーション能力を求められている場だ。 - ◆社会常識を逸脱した患者の存在
- 医者の倫理が問われる一方、モンスター・ペイシェントと言われる患者の存在も表面化してきた。
「モンスターと呼ばれるほどの状態に至るのは、医療従事者側の対応に対する不信感が積み重なったからだ」という指摘は素直に受け止めるにしても、明らかに社会常識を無視した要求を突きつけてくる患者や家族の存在も、否定することはできない。
このような患者に対してどう対応できるのか。あるいは、モンスターにしないための医者の態度とはどんなものなのか・・・。
このような現状を考えると、対人力のハードルは、明らかに上がっていると考えざるを得ない。
コミュニケーションが希薄な社会の中で
科学技術の進歩は、加速度的な社会の変化をもたらした。この急速すぎる変化は、これまでには考えつかない程、世代間のコミュニケーションギャップを広げているように思える。
また、世代間だけではなく、直接的対人関係が希薄になり、コミュニケーション能力の低下も問題視されている。
ところが医者は、学生というある種閉鎖的な社会から医療現場に入ったとたん、様々は世代の患者に対し、高度なコミュニケーション能力を求められることになる。
- ◆コンピューター画面しか見ない医者
- こうしたコミュニケーション能力の低下は、患者ではなく病気しか見えない医者を作り出しやすい。
コンピュータ上のデータばかり見て、患者の脈すら取ろうとしない医者。患者の顔色や表情を見ていないから、患者の変化にも気付かない。検査結果に出ないことは分からないという医者すら出てくる。
経験を積み患者をよく見ている医者は、患者の訴えや検査結果だけでなく、何らかの勘が働く瞬間があるらしい。
「何か変だ・・・」と調べてみると、思わぬ病気が見つかったりするというのだ。
良医は、言葉や表情によるコミュニケーションだけでなく、患者の心身全てと対話することを心がけているらしい。
医者塾にできること
医者塾の内容は、「良医」とは何かを考え、様々な視点から見た、医者としての人間像を描き出すものでありたいとい考えている。
その目的は、「良医」を育成し、質の高い医療を実現すること。そのために、医学生に対しては、医者としての心の指針を作り上げるための情報を提示し、現役医師に対しては、後輩育成のため様々な情報を提供してもらうと共に、内省の機会を提供する。
- ◆気付きのきっかけに
- 医者塾という情報誌で、直接教育することが可能などとは思っていない。医者塾にできることは、何らかの気付きをもたらすための、きっかけになることだろう。しかしそれが、きかっけとして機能するかどうかは、読者の感性や志に負うところが多いのも事実だ。
医者塾は、学生や現役医師・コメディカル・患者・家族など様々な立場の人々の思いや力を集めながら、志高く「良医」を目指す人々と共に、志高くその姿を変えて行きたいと思う。
医者塾制作に関わる人々の想いが絡み合い、どのような化学反応を起こすのか・・・今からとても楽しみだ。
